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    新・殿と黒装束

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      最近、夜な夜な冷蔵庫の中身が減っている気がする。

       というのも晩飯に作って冷蔵庫に入れて置いたものがなくなっているのだ。といっても皿ごとなくなるわけではなく、皿は綺麗に磨かれて元の食器棚に収まっている。

       思い返して見れば少し前から冷蔵庫にまだ残ってると思っていたチーカマやら牛乳やらがなくなっていた。気のせいかと思っていたがここまで来るとさすがに記憶違いではなかろう。

       ともすれど、夜な夜な飯だけ食って帰る泥棒というのもいなかろうし、寝ながら僕が自分で食っていたりするのだろうか。

       極度のダイエットをした人がたまに寝ながら冷蔵庫をあさるという話を聞いたことはあるがしっかり洗い物までするというのはあまり聞かない。

       そんな疑問に頭を悩ましているとインターホンが鳴った。

       大学生のひとり暮らしの部屋にアポもなく来るのなんて新聞屋か宗教の勧誘がおおかたなのでめったに出ないが、他のことを考えながらなんとなく扉を開けてしまった。

      「どうも。今、お時間大丈夫よろしいでしょうか」

       扉の向こうに立っていたのは。なんというか。そう、くのいちだった。頭がおかしくなっていなければ時代劇でたまに見るあの格好で玄関の前にくのいちが立っていた。僕の本能が危険を察し無言のまま扉を閉め、鍵をかけて振り返ると正座をしたくのいちがリビングに座っていた。

       なぜだ…

      「くのいちなので」

      「心を読まれた!?」

      「いえ、唇を読ませていただきました」

       と丁寧にお辞儀をする。色っぽい。しかし、今はそんなことに気をやっている場合ではない一大事だ。

      「そ、そのくのいちがなんの用でうちに」

      「順序が逆になってしまうのですが、朝食を勝手にいただいたのでご挨拶をしようかと。あ、お茶いただいて良いですかズズズ」

       すでに飲んでるし。

      「じゃあ、最近うちで頻繁に食料がなくなるのはあんたのせいか!」

      「?…最近といっても今朝いただいたのが初めてですが」

      「一週間前ぐらいからチーカマとか牛乳とかちょこちょこ無くなってるんだけど。今日も買い直したチーカマなかったし」

      「確かに今朝の冷蔵庫に入っていた生姜焼きは美味しく頂きましたチーカマは記憶に…」

      「このものはウソをついてるでゴザルよ!」

       もの凄い勢いで僕の後からにょっとでた指がくのいちを指す。振り返れば漫画でしか見ない様な黒装束の男がそこにいた。

      「誰だーーーーー!!」

       産まれて初めてぐらい絶叫でつっこんだ。

      「拙者は決して怪しいモノではござらん」

      「十二分に怪しいよ!」

       黒装束を見て今度はくのいちが慌てた様に立ち上がった。

      「お前は伊賀の…!」

      「いかにも。拙者は伊賀の忍び。甲賀の者に遅れはとらんでゴザル」

       なんの遅れだ。

       伊賀でも甲賀でもいいがなぜ僕の部屋でこの時代に忍者合戦が繰り広げられそうになっているかがわからない。

      「それより誰がウソをついているっていうのよ」

      「ふ、お主の他に誰がいるというのでゴザルか!」

       不適に笑うどっかから湧いて出た黒装束の男をくのいちと僕は言葉を失うように見入った。

      「…あ、あんた。口の周り」

       あからさまなまでにチーカマのカスがついている。今時食いしん坊キャラでもしないぐらいチーカマのカスがついているではないか。

       自分の口元に気づいた黒装束は激しく狼狽しこちらに向き直る。

      「と、殿これは違うでゴザル」

       誰が殿だ。

      「ええい、言い訳無用!お覚悟!」

       言うがいなや、くのいちは懐に隠した小太刀を取り出し一閃、黒装束の頭から斬りつけた。って刃傷沙汰ダーーーーーー!

      「あんずるな、峰打ちだ」

       チンっと小太刀を鞘に差すくのいち。よかった敷金が帰ってこないところだった。

       ゴトっという音とともに丸太が部屋の真ん中に倒れる。よくみれば黒装束がいない。

       まさか…!

      『ふふふははは、あまいでゴザルな。忍法変わり身の術でゴザルよ』

       すげー!フツーにすげー本当に忍法使ったよ!

      「うかつ、どこに行った!?」

       キョロキョロと狭い1Kの部屋であたりをうかがうくのいち。

      『はははははは!どこを見ているでゴザル。拙者はここでゴザルよ!』

       高笑いをあげ、丸太の背中についていたチャックを開け、なかからでけえたんこぶを付けた黒装束の男が出てきた。

       殴られちょるーーーーー!!

      「くぅ、今日のところは私の負けね」

       そうなの!?

      「ふふふ、甲賀はまだまだでゴザルな。語尾からして」

       語尾はどうでもいいかと。

      「あの、ところでふたりはいったい…」

       一応問うて見るとふたりは顔を見合わせ頷きあう。

      「見ての通り、伊賀部でゴザル」

      「甲賀部の者です」

      「部活なの!?」

      『いかにも』 

       いや、そんな声を合わせて返されても。

      「ちなみに威張れることではないでゴザルが拙者はすでに4年留年してあとがないで身でゴザル」

       ホントに威張れることでない。

      「ついでにあまり偉そうに言うのも難でゴザルが親にも先日勘当されて行く当てもない身でゴザル」

       偉そうに言われても困る。

      「そこで、殿。拙者を家に置いて…」

      「帰れ」

      「できれば私も」

      「断る」

      しかし、この日から食料が毎日の様に鍵をしようが何をしようが激しく消耗し、結果的に忍者を二匹飼うことになったのであった…

      続く。

      天寺英太郎 * 新・殿と黒装束 * 14:35 * comments(0) * trackbacks(0) * - -
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